できごと

鎚起銅器職人・大橋保隆による「鏡餅」の展示

2018/10/05

毎年工場の祭典になると、鎚起銅器職人大橋保隆にいい意味で鎚起銅器らしからぬものを要望し、展示している。

これまでを振り返ると、歴史を経てもなお残りつづけている古典的な美しいフォルムを(異素材である)鎚起銅器にうつすようなものが多かった。

たとえば(イッタラで量産される前の手吹きだったころの)ヌータヤルビ社がつくっていたカルティオ、あるいは初期伊万里の蕎麦猪口を模したニュートラルカップ(底辺のほうが短い台形型のもの)や柳宗理の23㎝ボウルのフォルムを模したものや、理化学用ビーカー、1個300円もしない(ラーメン屋や食堂でよく見かける)東洋佐々木ガラスのスタックタンブラーなど、鎚起銅器という素材を獲得することで変わる雰囲気を見るもらうこと、そして銅器という素材特性と鎚起独特のテクスチャーを感じてもらうことを目指したものだった。

その多くはおよそ、鎚起銅器に固着した豪華さを剥ぎ取り、日常づかいに耐えるものへの変換を意味していた。

そして今年は何を依頼しようか(正直言うと)とても迷っていた。

つねにこれを鎚起銅器でつくったらおもしろいかもー、というアンテナを張っているつもりではあるものの、ここ数年じっくりと考えてきた経緯もあり、真新しいたくさんの案が浮かぶわけもなかった。

迷った挙げ句のひとつの答えが「鏡餅(かがみもち)」だった

これまでの鎚起銅器をドレスダウンさせるための実用品ではなく(アートまでいかないまでも)儀礼的な調度品をはじめて依頼した。

毎年ある季節がやってくるとタンスの奥から出してくる調度品がいくつかある。

それは、ひな人形や兜、鯉のぼり、クリスマスツリーなどだが、これらはいずれも子どものためのものであり、子どもが大きくなればその習慣はやがてなくなる可能性が高い。

毎年買うものして(食品だけに)鏡餅がある。

量販店ではパックされた鏡餅セットが売られているし、餅をついたり、餅屋さんに行けば(本格的な)鏡餅のための餅を手に入れることはできるかもしれない。

ただぼくはそれを買う気にはあまりなれない。

鏡餅がただあればいいなら(来客に鏡餅を置く程度の家であること見せつけるような)即席セットでもいいけど、そういう気持ちでものを買いたくはない。

そんなぼくがこの鏡餅ならあってもいいし、毎年買うのではなく、毎年出してきてもいいな、と思えるものが今回できたように思う。

鏡餅は2階建てになっている。

一時的な小物入れとしても使えないことはないし、豪華なへそくりを隠す場所としてもわるくないかもしれない。(見つかってもぼくは知らない)

桐箱は収納用の箱をかねていて、飾るときには台座として使うことができる。

シンプルに飾りとしての和紙もあしらってみた。

バランスのいい大きさのみかんを載せたら、もう完成。

凝りに凝ったものだと、出すのが億劫になってしまうから、飾りやすくて、しまいやすいものがよい。

家にアートを置くことがためらわれる人は、まず実用的なアート(儀礼的装飾)からはじめてみてはどうだろうか?

価格は縁起のいい末広がりを意識して8万円(税込)とした。

毎年お正月になると出すことを楽しみになるアートピース的な調度品として、さらに子どもの世代まで末永く引き継いでいきつつ、うつくしく経年変化させていくための素材としての鏡餅。

ぜひ実物をご覧いただきたい。

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